転職先が決まってから退職は「裏切り」?正しい順番と会社への伝え方
「内定をもらってから退職の意思を伝えた」——それって会社への裏切りですか?
転職活動を会社に内緒で進め、転職先が決まってから初めて退職を申し出ることに対して、「裏切り者だ」「会社への恩を忘れた」と言われることがあります。しかし、これは本当に裏切りなのでしょうか。
結論から言えば、転職先が決まってから退職を申し出ることは、一般的かつ合理的な行動であり、裏切りではありません。むしろ、これが最もリスクの少ない正しい転職の順番です。
この記事でわかること:
- 転職先が決まってから退職することが「裏切り」ではない理由
- 在職中の転職活動に問題はないのか
- 内定後の退職スケジュールの組み方
- 会社への退職の伝え方とよくあるトラブルの対処法
- 入社日の交渉をスムーズに進めるコツ
「転職先が決まってから退職」は裏切りか
結論:裏切りではない。むしろ正しい行動
はっきり言います。転職先が決まってから会社に退職を申し出ることは、裏切りでも背信でもありません。これはビジネス社会において一般的かつ推奨される転職の進め方です。
その理由は3つあります:
1. 個人の職業選択の自由は法律で保障されている 日本国憲法(第22条)は、職業選択の自由を保障しています。転職活動を行い、転職先を選ぶことは個人の正当な権利です。これを「裏切り」と呼ぶことは、個人の権利を侵害する考え方に基づいています。
2. 在職中の転職活動は社会的に当たり前の行為 転職市場全体を見ると、転職者の大多数が在職中に転職活動を行っています。企業の採用担当者も「在職中の応募者」を当たり前のこととして対応しています。在職中に転職活動をすることは、ビジネスの現実として完全に受け入れられています。
3. 会社が社員を守る保証をしていないのと同様 会社も、業績悪化やリストラの必要性が生じた際には社員を解雇することがあります。会社が自社の利益のために組織変更を行うように、社員も自分のキャリアのために転職を選ぶ権利があります。これは対等なビジネス関係です。
「裏切り」と言う人は何を怒っているのか
「裏切り者だ」と言う上司・会社は、実際は以下のことに怒っていることが多いです:
- 「急に辞めることで業務に支障が出る」という現実的な問題
- 「事前に相談してほしかった」という感情的な問題
- 「引き止められなかった」という管理職としての焦り
これらは理解できる感情ですが、それは「裏切り」とは別の問題です。「裏切り」という言葉を使って感情的に引き止めようとする場合もあるため、その言葉に必要以上に動揺する必要はありません。
在職中の転職活動に問題はないのか
就業規則の「競業避止義務」に注意
在職中の転職活動そのものは問題ありませんが、就業規則に「競業避止義務」が定められている場合は注意が必要です。競業避止義務とは、在職中および退職後の一定期間、競合他社への転職や競合事業の立ち上げを禁止する規定です。
ただし、この競業避止義務は「業務上の秘密保持義務」に主眼があり、単に競合他社に転職すること自体を広く禁止することは、職業選択の自由の観点から法的に認められにくいとされています。心配な場合は就業規則を確認するか、専門家に相談することをおすすめします。
会社のPCや電話を転職活動に使わない
在職中の転職活動で絶対に避けるべきことは、会社の設備(PC・スマートフォン・メールアドレス)を転職活動に使うことです。これは就業規則違反になるケースが多く、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
転職活動はプライベートのデバイス・メールアドレスを使いましょう。
社内での口外はリスクが高い
転職活動中であることを社内の同僚・後輩・上司に話すことは、思わぬところから情報が漏れて職場環境が悪化するリスクがあります。内定が出て退職を申し出る直前まで、転職活動は自分の胸の内に留めておきましょう。
内定後の退職スケジュールの組み方
「内定から入社まで」の標準的な流れ
内定が出てから新しい会社への入社までの標準的なスケジュールは以下の通りです:
| タイミング | やること |
|---|---|
| 内定通知後すぐ | 条件(年収・入社日など)を確認・交渉 |
| 内定承諾後すぐ | 現職への退職申告(上司に面談を申し込む) |
| 退職申告後 | 引き継ぎ資料の作成・後任への引き継ぎ |
| 退職日まで | 社内外への挨拶・社内手続き |
| 退職翌日〜入社日 | 必要に応じて休暇・準備期間 |
一般的に、内定から入社まで1〜2ヶ月かかることが多く、企業側もこれを見込んでいます。
退職予告は就業規則を確認する
退職を申し出るタイミングは、就業規則の退職予告期間に従います。多くの会社では「退職の1ヶ月前までに申告」としていますが、「3ヶ月前」という会社もあります。
就業規則に定めがない場合、民法上は「退職申告から2週間後」に退職できます。ただし、2週間での退職は職場への負担が大きいため、引き継ぎをきちんと行うためにも1〜2ヶ月の余裕を持つことが望ましいです。
入社日の交渉はどこまで可能か
転職先に対して入社日の調整を依頼することは一般的で、多くの企業が柔軟に対応してくれます。
「現職の退職手続きに〇ヶ月程度かかる見込みなので、〇月〇日入社でご調整いただけますか?」という形で早めに相談しましょう。内定承諾後に伝えるより、内定通知の段階で希望入社日を確認しておくとスムーズです。
一般的に、内定から3ヶ月以内の入社を希望する企業が多く、それ以上かかる場合は内定が取り消されるリスクもあります。
会社への退職の伝え方
最初に伝えるのは「直属の上司」に
退職の意思は、まず直属の上司に直接口頭で伝えることが基本です。いきなり人事部に連絡したり、同僚に話したりするのはマナー違反です。
「少しお時間をいただけますか」と個別に面談の機会を設け、「退職したい」という意向を伝えます。このとき、転職先の情報(会社名・業種)を聞かれることがありますが、答える義務はありません。「別の会社でお世話になることになりました」という程度の説明で十分です。
退職理由は「ポジティブな理由」で伝える
退職理由を聞かれた際は、現職への不満よりも「自分のキャリアの方向性のため」というポジティブな理由で説明しましょう。
例えば:
- 「〇〇分野でより専門性を高めたいと思い、決断しました」
- 「家族の事情もあり、〇〇に近い環境での仕事を選ぶことにしました」
- 「以前からやりたかった業界に挑戦することにしました」
現職の不満をそのまま伝えると、引き止めや人間関係の悪化につながりやすく、残りの在籍期間が辛くなります。
引き止めへの対処法
退職を申し出ると、上司から引き止められることがあります。「昇給する」「担当を変える」「もう少し待ってくれ」という形での引き止めは珍しくありません。
引き止めに対しては、「ありがたいお話ですが、すでに決意は固まっています」と、感謝しながらも明確に断ることが大切です。一度退職を申し出た後に撤回すると、その後の立場が難しくなる場合があります。
退職の意思は、いったん伝えたら揺るがせないことが基本です。
退職から入社日までにやること
引き継ぎは丁寧に行う
転職先が決まってから退職するまでの期間、最も大切な仕事は「引き継ぎ」です。丁寧な引き継ぎは、退職後の評判を守るだけでなく、業界が狭い場合に将来また縁がある可能性も踏まえると、自分のためにもなります。
- 担当業務の一覧と進捗状況を文書化する
- 後任者への口頭引き継ぎと文書引き継ぎを両方行う
- 取引先・関係者への挨拶と担当引き継ぎの連絡をする
転職先への入社前準備
退職後から入社日までの間に、以下の準備を進めましょう:
- 入社に必要な書類(源泉徴収票・年金手帳など)の準備
- 新しい職場での仕事の予習・業界リサーチ
- 転職初日の服装・持ち物の準備
転職初日の挨拶や持ち物については転職初日の挨拶の完全マニュアルと転職初日の持ち物リストも参考にしてください。
よくある疑問【FAQ】
「転職先が決まってから退職」と言ったら怒られた。どうすれば?
感情的に怒る上司がいることは事実ですが、それはあなたの行動が間違いだったということではありません。丁寧に対応しながら、退職の意思は変えないことが大切です。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と謝意を示しながら、「決意は固まっています」と穏やかに伝え続けましょう。
退職を申し出たら有給消化を拒否された。どうすれば?
有給休暇の取得は労働者の権利です。会社が正当な理由なく有給消化を拒否することは、労働基準法上問題になる可能性があります。退職日に向けた有給消化は、退職前のスケジュールとして組み込み、退職申告時に申し出るのが一般的です。
引き継ぎが終わらないと退職できないと言われた。本当?
引き継ぎが完了しなくても、法律上の退職日は変わりません。「引き継ぎが終わるまで退職させない」という要求は、法的に根拠がありません。ただし、引き継ぎは職業上の義務として最大限の努力をすることが道義的に求められます。
内定から入社まで3ヶ月以上かかる場合はどうする?
内定先の会社によっては、3ヶ月以上の待機を認めてくれる場合もありますが、それ以上待てないとして内定が取り消されるリスクもあります。入社日の調整は内定承諾の段階でしっかり交渉しましょう。どうしても調整できない場合は、前倒しで退職申告を行い、早期退職を目指す選択肢もあります。
まとめ
- 転職先が決まってから退職を申し出ることは、裏切りではなく正しい転職の順番
- 在職中の転職活動は社会的に一般的。会社のPC・電話を使わないことと社内での口外に注意する
- 内定後は「条件確認→退職申告→引き継ぎ→退職→入社」の流れが基本
- 退職は直属の上司に直接口頭で伝え、ポジティブな転職理由を語る
- 引き止めには感謝しつつ、退職の意思を明確に保つ
- 丁寧な引き継ぎは自分の評判と将来への投資
転職先を決めてから退職するという順番は、あなた自身を守るための合理的な行動です。正しい手順で、納得できる転職を実現させましょう。
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白川凌雅
新卒でリンクアンドモチベーションに入社し、中堅・ベンチャーの組織人事コンサルに従事。 その後、KPMGコンサルティング、他Big4にて上場企業の役員報酬策定や人材開発、PMOをリードし、年間最優秀プロジェクト賞を受賞。