人事・採用担当への転職は難しい?必要なスキルと転職成功のポイント
「人事に転職したい」と思いながらも、「人事職は競争が激しくて難しいのでは」「未経験では無理かもしれない」と踏み出せずにいる方は多いのではないでしょうか。
実際、人事職への転職は「難しい」と言われることが多い職種のひとつです。ただし、難しさの中身は職種によって大きく異なります。「採用担当」「労務」「人事企画(制度設計)」の3つで、求められる経験・スキル・競争倍率がまったく異なるため、一括りにして考えると判断を誤る可能性があります。
この記事でわかることは以下のとおりです。
- 人事職の転職市場の実態(需要・競争倍率)
- 人事職に転職できる人・難しい人の違い
- 採用担当・労務・人事企画の3職種別難易度・求人数の比較
- 未経験から人事に転職する現実的なルート
- 人事転職の面接対策とよくある質問
①人事職の転職市場の実態(需要・競争倍率)
人事職への転職を検討する前に、市場全体の構造を理解することが大切です。求人数と応募者数のバランス(競争倍率)は、他の専門職と比較したときに特徴的な傾向があります。
人事求人の全体的な需要
大手転職サービスの掲載状況を見ると、人事・採用・労務関連の求人は常時3,000〜5,000件程度流通しています。数字だけ見ると一定の需要があるように思えますが、問題は応募者数の多さにあります。
人事職は「人と関わる仕事」「組織づくりに関わりたい」という志望者が多く、1件の求人に対して50〜100名以上の応募が集まることも珍しくありません。倍率の高さが「難しい」と言われる主因のひとつです。
競争倍率が高い理由
- 未経験でも応募できる求人が相対的に多いため、母集団が大きくなりやすい
- 「やりがい職種」としてのイメージが強く、異職種からの志望者が多い
- 求人数に対して採用枠(ヘッドカウント)が少ない傾向がある
特に「採用担当」は人気が高く、「労務」「人事企画」に比べて競争倍率が高いことが多いです。
人事転職の年収相場
| 職種 | 経験年数 | 年収目安 |
|---|---|---|
| 採用担当(未経験・第二新卒) | 0〜2年 | 270〜370万円 |
| 採用担当(経験者) | 3〜6年 | 380〜550万円 |
| 労務担当(実務経験者) | 2〜5年 | 330〜480万円 |
| 人事企画・制度設計 | 5年以上 | 500〜800万円 |
人事職の年収は、「どの職種か」「どの規模の企業か」で大きく変わります。人事企画・制度設計のポジションは高年収帯も多い一方、未経験スタートは年収300万円台からが一般的です。
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②人事職に転職できる人・難しい人の違い
「人事転職は難しい」という声が多い一方で、実際に転職を成功させている人もいます。違いはどこにあるのでしょうか。
人事職に転職しやすい人の特徴
コミュニケーション能力・対人折衝経験がある 人事の仕事は、候補者・社員・経営陣・現場マネージャーなど多様な関係者と関わります。営業・接客・教育・カスタメサポートなど、対人折衝が多い職種の経験は人事職でも高く評価されます。
採用・人材に強い関心と「語れる経験」がある 面接官をやったことがある、部下の育成に関わったことがある、社内の採用プロセス改善に提案したことがある——こうした「人事に近い経験」を持っている人は有利です。
組織の中で「人」に関わる課題解決をしてきた マネージャー経験、チームリーダー、新人指導担当など、人材育成・組織運営に関わった経験は人事職でのアピール材料になります。
人事職への転職が難しい人のパターン
- 「なんとなく人が好きだから人事に興味がある」程度の動機で、具体的な業務理解がない
- 人事職の中の特定の業務(採用・労務・企画)への解像度がなく、「人事なら何でもいい」という姿勢
- コミュニケーション経験が少なく、対人業務の実績がほとんどない
- 年収が大幅に下がることを許容できない(未経験転職では一時的な年収ダウンが伴うことが多い)
転職できる人とそうでない人の差は、「どれだけ人事の仕事を理解し、自分の経験と結びつけて語れるか」に集約されます。
③人事の仕事内容別(採用/労務/制度企画)の転職難易度
人事職は「採用担当」「労務担当」「人事企画(制度設計)」の3つに大別されます。それぞれで求められるスキル・転職難易度・求人数が異なります。自分がどの方向を目指すかを明確にすることが、転職戦略の第一歩です。
採用担当
仕事内容:求人票の作成・媒体管理、候補者のスクリーニング、面接の設定・実施、内定者フォロー、エージェントとの連携
転職難易度:★★★(中〜高)
求人数:3職種の中で最も多い(全体の約50〜60%)
未経験可否:可の求人が比較的多い
必要なスキル・経験:対人折衝力、採用管理システムの操作、営業・接客経験が活かしやすい
ポイント:競争倍率が高いが求人数も多いため、エントリー数を増やすことで内定確率を上げられる。「採用の成果をどう測定するか」「採用ブランディングの観点」を語れると差別化できる。
労務担当
仕事内容:入退社手続き、勤怠管理、給与計算補助、社会保険の手続き、規程類の管理
転職難易度:★★(中)
求人数:採用よりは少なく、全体の約25〜30%
未経験可否:事務経験があれば可の求人も多い
必要なスキル・経験:正確性・細かい作業への適性、社会保険や労働法の基礎知識(社会保険労務士の勉強経験があると有利)
ポイント:採用担当と比べて人気は低めだが、その分競争倍率は下がりやすい。Excelや給与計算ソフトのスキルがあると評価される。将来的に社会保険労務士(社労士)を目指すキャリアパスとしても選ばれる。
人事企画(制度設計)
仕事内容:評価制度の設計・運用、報酬体系の整備、組織設計、エンゲージメント施策の企画・推進
転職難易度:★★★★(高〜非常に高い)
求人数:3職種で最も少ない(全体の約10〜20%)
未経験可否:ほぼ不可。人事実務経験5年以上が最低ラインになることが多い
必要なスキル・経験:経営的な視点、データ分析、人事コンサル・組織開発の知識、交渉・ファシリテーション
ポイント:採用・労務の実務経験を積んだ上で目指すのが現実的なキャリアパス。マッキンゼー・リクルートなどの出身者や、コンサル経験者が優遇されるケースも。
3職種の比較まとめ
| 職種 | 求人数 | 未経験可否 | 転職難易度 | 平均年収 |
|---|---|---|---|---|
| 採用担当 | 多い | 可能(一部) | 中〜高 | 350〜500万円 |
| 労務担当 | 中程度 | 事務経験あれば可 | 中 | 330〜480万円 |
| 人事企画 | 少ない | ほぼ不可 | 高〜非常に高い | 500〜800万円 |
④未経験から人事に転職する現実的なルート
人事未経験から転職するには、現実的なルートを理解した上で計画を立てることが重要です。「なんとなく人事がいい」では転職活動が長期化します。
ルート1:採用担当からスタートする
最も多くの未経験者が選ぶルートです。採用担当は人事職の中で最も求人数が多く、未経験可の求人も相対的に多いためです。
対象となりやすいのは、以下の経験を持つ方です。
- 法人営業・テレアポ経験者(候補者との関係構築に活かせる)
- 接客・店舗運営経験者(コミュニケーション力と採用現場での親和性)
- 人材業界(派遣・紹介)の営業経験者(採用知識・エージェント連携の実務経験)
特に人材会社のRA(リクルーティングアドバイザー)経験者は採用担当への転職が非常にスムーズです。人材業界を経由して企業の人事部に転職するルートは、業界内でも定番のパスになっています。
ルート2:労務担当からスタートする
事務系の職種から転職する場合に有効なルートです。採用担当より競争が少ない分、書類通過率が上がりやすい傾向があります。
有利な経験・資格:
- 一般事務・総務事務(書類処理・手続き業務の経験)
- 社会保険労務士(社労士)の学習・受験歴(合格していなくても学習中であることが評価されるケースも)
- Excelの実務スキル(勤怠・給与データ管理に活用できる)
ルート3:ベンチャー・スタートアップで「人事全般」担当として入る
ベンチャー企業では、採用・労務・研修・社内制度整備を1〜2名で担当するポジションがあります。業務が広範な分、短期間で多様な人事経験を積める環境です。
未経験での採用に積極的な企業も多く、人事の「全体像」を理解するファーストキャリアとして有効です。ただし、業務量が多く、仕組みが整っていないことも多いため、自走力と対応力が求められます。
転職活動の現実的な期間
- 採用担当(前職で関連経験あり):2〜4ヶ月
- 採用担当(完全未経験):4〜6ヶ月
- 労務担当(事務経験あり):3〜5ヶ月
- 人事企画(未経験から直接):難航することが多く、まず採用/労務から実務を積むことを推奨
⑤人事転職の面接対策
人事職の面接では、候補者自身が「人を見る目があるか」「組織の課題に共感できるか」を評価されます。通常の転職面接以上に、回答の質と深さが求められます。
人事面接でよく聞かれる質問と回答のポイント
「なぜ人事職を志望したのですか?」
「人が好き」「人間関係が得意」といった回答は、人事職の本質的な業務(採用目標の達成、法令遵守の徹底、制度設計など)への理解が浅いと判断されるリスクがあります。
回答では「どのような組織課題に関心があるか」「これまでの経験でどのような人材課題に接したか」を具体的に語ることが重要です。
例:「前職の営業現場で、採用の質による早期離職が繰り返されているのを目の当たりにしました。採用基準と現場のミスマッチを解消できる人事担当者になりたいと考え、志望しました。」
「人事の仕事で難しいと思う点は何ですか?」
正直に課題を認識しながらも、それに向き合う姿勢を示すことが大切です。「候補者への誠実な対応と採用目標達成の両立」「社員の期待と会社のコスト管理のバランス」など、業務の構造的な難しさを語ると理解度の高さが伝わります。
「あなたが採用したいと思う人材像を話してください。」
具体的なビジョンを持ち、それがどのような組織課題に基づいているかを語れると好印象です。自分の会社観・組織観を持っていることが伝わります。
面接での差別化ポイント
- 人事に関連するインプットを示す:人事・組織に関する書籍・ポッドキャスト・ニュースを日常的に追っていることをさりげなく伝える
- 前職での「人材課題への関与」を掘り起こす:マネジメント経験、新人指導、採用補助などの実績を洗い出しておく
- 数値で語れる部分を準備する:「チームで〇人の採用面接に同席」「OJTで〇名を指導」など具体的な数字があると説得力が増す
⑥FAQ
Q. 人事未経験で30代での転職は可能ですか?
A. 可能ですが、ポテンシャル採用の幅が20代より狭まります。30代での未経験転職では、「なぜ今人事なのか」の説明に説得力が求められます。これまでのキャリアで人材・組織に関わった経験(マネジメント・指導・採用補助など)を整理し、それを人事職でどう活かすかを明確に語れるかどうかが鍵になります。
Q. 社労士資格は人事転職に有利ですか?
A. 特に労務担当への転職では大きな強みになります。社労士合格者はもちろん、受験経験・勉強中の段階でも「労働法・社会保険の知識がある」というアピールになります。採用担当志望の場合は、社労士よりも「採用業務の理解」「コミュニケーション経験」のほうが重視されます。
Q. 人材業界(派遣・紹介会社)の経験は人事転職に有利ですか?
A. 非常に有利です。人材会社のRA(担当企業との採用コンサル)やCA(求職者支援)の経験は、企業内採用担当への転職でそのまま評価されます。採用プロセスの全体像を理解しており、エージェントとの連携経験もあるため、即戦力として採用されるケースが多いです。
Q. 人事転職後のキャリアはどのように広がりますか?
A. 採用担当→採用マネージャー→HRBPや人事企画へのステップアップが一般的なルートです。労務担当から社労士資格取得後に独立するパターンも。また、組織開発・エンゲージメント・ピープルアナリティクスなど、HRテック×データ分析の方向に進むキャリアも増えています。
Q. 採用担当の仕事はきついですか?
A. 採用目標(採用人数)のプレッシャー、候補者からの急なキャンセル対応、求人の変更への対応など、スケジュール管理が難しい側面はあります。一方で「内定者からお礼を言われる」「採用した人材が会社の戦力になる」という達成感は独特のものがあります。特に採用が繁忙な4〜6月・9〜11月は業務量が増えることが多いです。
まとめ
- 人事職の求人数は3,000〜5,000件程度あるが、応募者も多く競争倍率が高い職種
- 「採用担当」「労務担当」「人事企画」で難易度・必要経験・年収がまったく異なる
- 採用担当は求人数が最も多く未経験可の割合も高いが競争が激しい。労務は競争が少なめで事務経験活用可。人事企画は実務経験必須でハードルが高い
- 未経験転職は「採用担当」または「ベンチャーの人事全般」からスタートするのが現実的
- 人材業界(派遣・紹介会社)の営業経験は採用担当への転職に非常に有利
- 面接では「なぜ人事か」に業務理解を込めた答えを準備することが成否を分ける
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この記事の監修・執筆
白川凌雅
新卒でリンクアンドモチベーションに入社し、中堅・ベンチャーの組織人事コンサルに従事。 その後、KPMGコンサルティング、他Big4にて上場企業の役員報酬策定や人材開発、PMOをリードし、年間最優秀プロジェクト賞を受賞。
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