転職を引き止められたときの対処法。上手な断り方と絶対NGな行動
「退職を伝えたら、上司に引き止められた。どう断ればいいのか……」
転職の意思を伝えた後に引き止めに遭うのは、よくあることです。「条件を上げるから残ってほしい」「君がいないと困る」「もう少し待ってくれ」——こうした引き止めの言葉に、どう対応するかは多くの転職者が悩むポイントです。
引き止めに対して曖昧な返答をしてしまうと、退職時期が伸び伸びになり、転職先の入社日まで影響が出ることがあります。転職を決意している場合は、引き止めに対して毅然かつ丁寧に対応する方法を知っておくことが重要です。
この記事では、以下のことをお伝えします。
- 引き止めのパターン別の対処法
- 上手な断り方・押し切る伝え方
- 「待遇改善を提示された」ときの判断基準
- 絶対にやってはいけないNG行動
- よくある疑問へのQ&A
転職引き止めが起きる理由を知っておく
上司・会社が引き止める本当の理由
引き止めには「あなたへの期待」と「会社の都合」の両方が混在しています。
あなたへの本当の評価:会社があなたを引き止めるのは、あなたが職場にとって価値のある人材だからです。「辞めてもらっては困る」という言葉の裏には、本物の評価があります。
会社・上司の都合:同時に、「引き継ぎが大変」「代わりを探すのが面倒」「辞めた場合の上司の責任問題」という会社側の都合もあります。あなたのためを思っているだけでなく、組織の利益のための引き止めも含まれています。
引き止めの言葉の全てが「あなたを思ってのこと」ではないことを理解しておくと、冷静に対応できます。
引き止めに揺らぎやすいタイミング
引き止めに揺らぎやすいのは、以下のような状況のときです。
- 上司との人間関係が良く、申し訳ない気持ちが強い
- 「もう少し頑張れば状況が変わるかもしれない」という期待がある
- 転職先への不安が残っている
- 待遇改善の提示があり、本当に魅力的に見える
このような状況では、一時的に引き止めに応じたくなることがありますが、「なぜ転職を決意したか」という原点に立ち返ることが重要です。
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引き止めパターン別の対処法
パターン①:「君が必要だ。残ってほしい」という情に訴える引き止め
最も多いパターンです。「君のことが心配」「チームが困る」「あなたがいないとこのプロジェクトが」という感情的な訴えかけ。
対処法 感謝と敬意を示しながら、意思が固いことを明確に伝えます。
「◯◯さんにそう言っていただけることは大変光栄です。これまでのご指導に心から感謝しています。ただ、今回の決断は長期間熟慮した結果であり、意思は変わりません。残りの期間、精一杯引き継ぎに取り組みます。」
ポイントは「感謝→意思の表明→引き継ぎへの約束」の流れで伝えること。感情的にならず、丁寧かつ明確に伝えましょう。
パターン②:「給与を上げる・昇進させる」という待遇改善の提示
「残るなら◯万円上げる」「役職をつける」という条件提示。これが最も判断が難しい引き止めです。
判断の基準 この提示を受け入れるかどうかは、以下の2点で判断しましょう。
「なぜ今まで改善されなかったのか」という問いに対して、納得できる答えがあるかどうか。「辞めると言ったから初めて動いた」のであれば、その後も「辞めると言わないと変わらない」環境が続く可能性があります。
「転職を決意した理由が給与・昇進だけだったか」。もし待遇以外にも人間関係・仕事内容・職場文化への不満があったなら、待遇改善だけで解決するわけではありません。
断り方 「ご提案は大変ありがたいのですが、今回の転職の理由は待遇だけではなく、キャリアの方向性も含めての総合的な判断です。すでに転職先に内定を承諾しており、ご期待に添えず申し訳ありませんが、予定通り◯月末での退職とさせてください。」
パターン③:「もう少し待ってほしい」「時期をずらせないか」という先延ばし要求
「あのプロジェクトが終わるまで」「後任が見つかるまで」という引き止め。
対処法 引き継ぎへの協力は約束しつつ、退職日は動かさないことを明確にします。
「引き継ぎに関しては、退職日までに可能な限り丁寧に対応します。ただし退職日の変更は難しい状況です。引き継ぎのスケジュールについては、◯◯(上司)と一緒に計画を立てさせてください。」
転職先の入社日が決まっている場合は、「転職先の入社日が◯月◯日に決まっており、変更が難しい状況です」と伝えることで、退職日変更の交渉に具体的な理由を持たせることができます。
パターン④:「辞めさせない」「法的手段を取る」という脅し的な引き止め
「辞めるなら損害賠償を請求する」「競業避止義務違反になる」などの脅しに近い引き止め。
対処法 まず、こうした引き止めは法的に根拠のないケースがほとんどです。
日本では「退職の自由」は法律で保障されており(民法627条)、会社が退職を一方的に禁止することはできません。2週間前に退職の意思を伝えれば、法律上は退職できます(有期雇用の場合は別途確認が必要)。
脅し的な引き止めに遭った場合は、労働基準監督署や弁護士への相談も選択肢に入れましょう。
引き止めを「上手に断る」ための基本原則
原則①:「検討します」は言わない
引き止めに対して「少し考えさせてください」と言ってしまうと、会社側は「まだ引き止めのチャンスがある」と判断して、さらに交渉が続きます。
意思が固い場合は「検討します」とは言わず、「意思は変わりません」と明確に伝えることが大切です。
原則②:転職理由を詳しく話しすぎない
「なぜ辞めるのか」「転職先はどこか」と聞かれても、詳細を話す必要はありません。転職先の会社名・年収・条件を話してしまうと、それを材料にさらなる引き止め工作が行われることがあります。
「一身上の都合です」「個人的な理由です」で通して構いません。
原則③:退職日は具体的に決めて動かさない
引き止めに遭わないための最大の防御は、退職日を具体的に決めて「この日に退職します」と明確に伝えることです。
「◯月◯日が最終出社日で、◯月末日付での退職とさせてください」という形で、日付を確定させた状態で退職を申し出ると、引き止めに揺さぶられにくくなります。
原則④:引き留めへの回答は即答しない
引き止めに対してその場で即答する必要はありません。「一度持ち帰って考えます」と言って時間を取ることは、「再考する」という意思表示ではなく、冷静に対応するための余裕を作るためです。
ただし「持ち帰って考える」と言った後は、翌日には「やはり意思は変わりません」という回答を明確に伝えることが重要です。
絶対にやってはいけないNG行動
NG①:引き止めに応じて転職をやめる(気持ちが曖昧なまま)
引き止めに応じて転職を取りやめる選択肢もゼロではありません。ただし、引き止めの条件(待遇改善など)に応じた場合、その後の職場での立場が変わることがあります。
「辞めようとした人」として見られる、待遇改善が本当に実行されるか不透明、また同じ不満が出てきたときにまた転職活動をすることになる——こうしたリスクを考えたうえで判断しましょう。
NG②:転職先に「入社日を遅らせてほしい」と安易に頼む
引き止めに応じて退職日を先延ばしにしようとした場合、転職先に「入社日を変更してほしい」と伝えなければなりません。
転職先にとっても入社日の変更は採用計画に影響します。理由によっては内定取り消しになるリスクもゼロではないため、安易に転職先への入社日変更を依頼することは避けましょう。
NG③:引き止めに感情的に反論する
引き止めに腹を立てて感情的に反論したり、「この会社には問題がある」と不満を爆発させたりすることは避けましょう。
退職後も業界が狭ければ元同僚・上司と仕事で関わることがあります。感情的な退職は、後々の人間関係に悪影響を与えることがあります。
FAQ
Q. 退職引き止めが長期化しています。どうすればいいですか?
A. 退職の意思は書面(メール)で伝えることも有効です。「◯月◯日付で退職します」と文書で伝えることで、口頭のやり取りで引き止めが続く状況を整理できます。また、引き止めが長期化して精神的に辛い場合は、退職代行サービスを利用することも選択肢のひとつです。
Q. 直属の上司に引き止められています。人事に直接相談してもいいですか?
A. 可能です。直属の上司との話し合いがまとまらない場合は、人事部や上位の上司に相談するルートを取ることができます。「◯月末での退職を希望していますが、上司との話し合いが進んでいないため、人事の方にご相談させてください」という形で相談できます。
Q. 待遇改善を提示されました。受け入れてもいいですか?
A. 転職を決意した理由が主に待遇であり、それ以外の不満が小さい場合は、提示内容を吟味したうえで受け入れることも選択肢です。ただし「なぜ今まで改善されなかったのか」「改善が文書で約束されるか」を確認することが重要です。口約束の待遇改善は、後から反故にされるリスクがあります。
Q. 退職日の2週間前を切ってしまいました。法的に大丈夫ですか?
A. 民法上は2週間前の告知で退職できますが、就業規則では「1ヶ月前」「3ヶ月前」などを定めているケースもあります。就業規則の定めがある場合でも、双方の合意があれば早期退職は可能です。会社が強硬に「認めない」と言っても、民法上は2週間後に退職効力が発生します。
まとめ
- 引き止めは「評価の裏返し」と「会社の都合」の両方が含まれている
- パターン別対処:感情的訴え→感謝+意思の明示、待遇改善→理由ごと断る、先延ばし→退職日は動かさない
- 上手な断り方の原則:「検討します」と言わない・転職理由を話しすぎない・退職日を具体的に決める
- 「辞めさせない」という脅しは法的根拠がないケースがほとんど。退職の自由は法律で保障されている
- 引き止めへの感情的な反論はNG。円満退職を目指す姿勢を崩さない
- 引き止めが長期化・悪化する場合は人事部への相談・退職代行の活用も選択肢
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この記事の監修・執筆
白川凌雅
新卒でリンクアンドモチベーションに入社し、中堅・ベンチャーの組織人事コンサルに従事。 その後、KPMGコンサルティング、他Big4にて上場企業の役員報酬策定や人材開発、PMOをリードし、年間最優秀プロジェクト賞を受賞。
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