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コラム

転職後の給料が下がったときの対処法と後悔しないための事前確認

✍️ 白川凌雅

「転職して給料が下がった——思っていた金額と違う」——内定時は条件に納得していたはずなのに、実際に働き始めてから「こんなはずじゃなかった」と感じるケースがあります。

結論:転職後に給料が下がったと感じる理由の多くは「オファー時の年収と実際の総支給額のギャップ」です。みなし残業・各種手当の有無・社会保険料の変化が主な原因で、多くは入社前の確認で防げます。

リクルートワークス研究所の調査によると、転職者の約35%が「入社後の給与が期待より低かった」と感じた経験があり、その主な原因は「固定残業代の理解不足」と「手当の差」でした。

この記事でわかること:

  • 「思ったより給料が低い」と感じる4つの原因と見抜き方
  • 入社前に必ず確認すべきオファーレターの読み方(7チェックポイント)
  • 業種別・年齢別の給与下落ライン目安
  • 入社後に給料を上げるための現実的なアプローチ
  • FAQ:よくある疑問に答えます

「給料が下がった」と感じる4つの主な原因

原因1:みなし残業込みの年収だった

結論:「年収〇〇万円」の中に「みなし残業代(固定残業代)」が含まれているケースが多く、残業がなくても支払われる分が年収に算入されているため、実質の基本給は低くなります。

例:年収500万円提示のうち、月30時間分の残業代(約5万円×12ヶ月=60万円)がみなし残業として含まれている場合、基本給ベースは440万円相当になります。

みなし残業が多い業界の傾向:

業界 みなし残業の多さ 注意ポイント
IT・Web ★★★ 月40〜80時間のみなしが一般的
広告・マーケ ★★★ 残業代込みの「総支給額」表記が多い
営業職 ★★ インセンティブ込みで変動しやすい
製造業 比較的わかりやすい給与体系
公務員・金融 固定残業は少ない傾向

見抜き方: オファーレターに「固定残業代〇〇時間分」の記載があれば、その分を除いた額が実質的なベースです。求人票に「みなし残業〇〇時間含む」の記載があれば必ず確認しましょう。

原因2:前職にあった手当が新職場にない

住宅手当・家族手当・役職手当・食事補助・交通費上限などは会社によって大きく異なります。「基本給が同じ」でも手当込みの前職のほうが実収入が高かったというケースが多くあります。

手当の差が給与に与える影響の例

手当の種類 前職 新職場 年間差額
住宅手当 月2万円 なし -24万円
家族手当(妻・子1人) 月2.5万円 なし -30万円
食事補助 月5,000円 なし -6万円
交通費(上限) 月3万円 月1万円 -24万円
合計差額 -84万円

基本給が同額でも手当によって年間84万円の差が出るケースは珍しくありません。

見抜き方: 内定後に「手当の一覧と支給条件」を採用担当者に確認する。エージェント経由であれば代わりに聞いてもらえます。

原因3:社会保険料・税金の変化

転職後に給与体系が変わると、社会保険料の計算基準(標準報酬月額)が変化します。また、年の途中で転職した場合、住民税の天引き方式が変わることで「手取り額」が変化するケースがあります。

特に注意が必要な場面

  • 年途中転職:転職前の住民税(前職の収入に基づく)が高額のまま天引きされる時期がある
  • 扶養から外れた場合:配偶者を自分の扶養に入れた場合、健康保険料が上がる
  • 等級の切り替え:給与が下がったことで標準報酬月額が下がるまで3〜4ヶ月かかる

見抜き方: 初月の給与明細を受け取ったら、控除額の内訳を前職と比較する。わからなければ社内の人事・総務部門に確認を。

原因4:試用期間中の給与が減額されていた

試用期間中は本採用時より給与を低く設定する企業があります(雇用契約書に記載があるはずですが、見落としやすい)。

具体例:本採用後の月収35万円に対して、試用期間3ヶ月は32万円。3ヶ月で9万円の損失になります。

見抜き方: 雇用契約書の「試用期間中の給与額」と「試用期間終了後の給与額」を必ず別々に確認する。合わせて試用期間の長さも把握しておきましょう(通常3〜6ヶ月)。


転職で「許容できる給与下落ライン」の考え方

転職によってキャリアアップや働き方改善を目指す場合、多少の給与下落は許容範囲となることがあります。では、「どこまで下がったら危険か」という基準はあるのでしょうか。

年収ダウンが許容されるケース

ケース 許容目安 理由
残業が大幅減少 月8万円の残業代→ゼロなら年収96万円減でも同等 時間単価が維持される
成長業界・昇進機会 年収の10〜15%ダウンまで 2〜3年でキャッチアップ可能
ベンチャー転職(ストックオプションあり) 年収の20〜30%ダウンも 将来的なリターンを期待
スキルアップ目的の転職 5〜10%ダウンまで 市場価値向上による回収

危険ラインのシグナル

  • 手取りが住宅ローンや家賃支払いに支障をきたす水準
  • 年収が30%以上ダウンする(市場価値と乖離している可能性)
  • 昇給ルートが見えない会社への転職でさらに下がる

転職で年収が下がることについては「転職で年収が下がるのは当たり前?許容ラインと後悔しない方法」も参考にしてください。


入社前に防ぐ:オファーレターの7つのチェックポイント

入社前に以下を確認することで、ほとんどの「思っていた金額と違う」を防げます。

  • 基本給の額(固定残業代・手当を含まない純粋な基本給)
  • 固定残業代の有無と時間数(みなし残業が何時間分か)
  • 各種手当の一覧と支給条件(住宅・通勤・家族手当等)
  • 賞与の支給月・支給基準(実績連動か固定か、初年度はどうか)
  • 試用期間中の給与額(本採用後との差額)
  • 昇給の時期と基準(年1回か、評価連動か、過去の昇給実績は)
  • 社会保険の加入有無と種類(健保・厚生年金の確認、特に中小企業)

確認する際のコツ

採用担当者への確認は、オファー面談か内定承諾前のタイミングが最適です。「条件面について詳しく確認したいのですが」と最初に断れば、確認自体が失礼になることはありません。

特にエージェント経由の転職であれば、エージェントが代わりに確認してくれます。遠慮なく任せましょう。


入社後に給料を上げるための現実的なアプローチ

転職後に実際に給料が下がっていた場合、以下のアプローチが有効です。

アプローチ①:入社6ヶ月後の評価面談を狙う

入社後6ヶ月〜1年が、最初の給与調整のタイミングになることが多いです。この時期に向けて「数値で語れる実績」を積み上げることが、昇給交渉の最大の武器になります。

数値化できる実績の例

  • 担当顧客数:入社時〇社 → 現在〇社
  • 売上貢献額:月間〇万円
  • コスト削減:〇%改善
  • 生産性向上:〇件/月 → 〇件/月

アプローチ②:「入社時の条件との差」を誠実に話す

入社から数ヶ月が経過した時点で、上司に「条件面のすり合わせをしたい」と申し出ることは決して非常識ではありません。「入社後の実績も踏まえ、一度話し合いの機会をいただけますか」という言い方で、プロフェッショナルな場を設定します。

伝え方の例

「入社して6ヶ月が経ちました。当初お伝えいただいた条件と実際の支給額に差があり、継続的に安心して働くためにも、一度条件面についてお話しする機会をいただけますでしょうか」

アプローチ③:社内の評価制度をいち早く理解する

昇給がどの基準で決まるかを明確にすることで、「何をすれば評価されるか」の道筋が見えます。入社初月のうちに人事担当者か上司に確認するのがベストです。

確認すべき評価制度のポイント

  • 評価の時期(年2回・年1回など)
  • 評価基準(数値目標か、行動評価か)
  • 昇給の幅(評価S〜Cで何円〜何円か)
  • 昇給以外のキャリアパス(役職昇進による給与アップ)

アプローチ④:給与が改善されない場合は再転職を検討

入社から1〜2年経過しても給与が上がる見込みがない場合、再転職を視野に入れることも一つの現実的な選択肢です。「転職直後の再転職」は印象が悪いという思い込みもありますが、1〜2年の実績を積んでからであれば問題なく次のステップへ進めます。


FAQ:転職後の給料ダウンに関するよくある質問

Q1. 転職後に「聞いていた年収と違う」と気づいた場合、法的に主張できますか?

雇用契約書や労働条件通知書に記載された条件と実際の支給額が異なる場合、法的に差額を請求できる可能性があります。まずは雇用契約書と給与明細を突き合わせ、差異があれば総務・人事部門に確認しましょう。明確な虚偽告知があれば労働基準監督署への相談も選択肢です。

Q2. 転職を繰り返すと給料は下がっていきますか?

転職回数自体が給与に影響するのではなく、「各転職でどれだけスキル・経験を積んだか」が給与に反映されます。ただし、転職回数が多すぎる(5回以上)と採用で不利になる場合があり、結果的に条件交渉力が弱まることはあります。転職回数と職務経歴の関係については転職回数が多い職務経歴書の書き方と対処法も参考にしてください。

Q3. 試用期間中に給与が低いのは違法ではないですか?

雇用契約書・労働条件通知書に「試用期間中の給与は〇〇円」と明記されており、それが最低賃金を下回らない限り、試用期間中の減額自体は違法ではありません。ただし、事前の説明なく減額された場合は問題となります。

Q4. 給料が下がった原因がみなし残業だとわかった場合、どうすればいいですか?

まずみなし残業時間(例:月30時間)を超える実残業時間を記録しましょう。超過分は別途支払われるべきものです(「固定残業代を超えた場合は別途支払い」が労働基準法の要件)。超過分が支払われていない場合は、未払い賃金として請求できます。

Q5. 転職後すぐに年収交渉するのは失礼ですか?

入社直後の年収交渉は一般的に印象が悪く、関係構築前の交渉は逆効果です。最低でも3ヶ月、できれば6ヶ月以上の実績を積んでから交渉するのが現実的です。年収交渉の方法については転職の年収交渉で成功する方法も参考にしてください。


まとめ:給料ダウンを防ぐ行動チェックリスト

入社前にやること

  • オファーレターの7点を確認(基本給・固定残業・手当・賞与・試用期間・昇給・社保)
  • 前職の総支給額を源泉徴収票で把握しておく
  • 手当の差額を試算して実質的な年収を計算する
  • 疑問点はエージェントまたは採用担当者に確認する

入社後にやること

  • 初月の給与明細を前職と比較する
  • 評価制度・昇給タイミングを入社初月に把握する
  • 数値で語れる実績を積み上げる
  • 6ヶ月後の評価面談で正式に交渉の機会を作る

転職後に給料が下がったと感じた場合でも、正しい情報把握と適切なアクションで改善できる余地は十分にあります。まず原因を特定し、次に打てる手を一つずつ実行していきましょう。


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白川凌雅

新卒でリンクアンドモチベーションに入社し、中堅・ベンチャーの組織人事コンサルに従事。 その後、KPMGコンサルティング、他Big4にて上場企業の役員報酬策定や人材開発、PMOをリードし、年間最優秀プロジェクト賞を受賞。

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